現役の越境ECコンサルタントが案内する実践的な海外向けネットショップ開業ガイド|クロスボーダー eCommerce

デジタルコンテンツの越境EC Part 3 – 運用時の3つのポイント

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おはようございます。連休も終わり、今日から仕事再開の方が多いのではないかと思いますが、今週はあと2日ですから、気が楽です。血圧を上げずに頑張ります。

さて、今日はデジタルコンテンツの越境ECにおいて抑えておくべきポイントの締めくくりとなりなす。Part1では基本モデルの全体像、Part2ではショップ構築時のポイントを整理しました。デジタルコンテンツの越境ECは少人数でも小さな規模での会社でも、即座に世界を相手に戦える参入障壁の低い市場です。

プログラミングやデジタルデザインに強いエンジニアであれば、自分一人でデジタルコンテンツを作り、越境EC向けにダウンロードサイトを立ち上げ、世界のアフィリエイターの力を借りて、一気にビジネスを拡大できる可能性があります。実際、私の知っている40歳前後のソフトウェアエンジニアの方は、15年勤務していた大手企業を退職して個人事業主として最近独立されました。その方はゲーム開発ソフトの英語バージョンを作成中で、近いうちに世界に向けてオンライン販売サイトを立ち上げる予定です。製造原価は自分の工数のみです。売上げはほぼ利益になるという、おろそしく高い利益率の高いビジネスになります。事務所も持たず、従業員も雇わないで、自分でできない分野はアウトソースで補い運営しますから、固定費も極端に少なく、開業リスクは小さいです。その方はこのビジネスをやりながら、開発委託の仕事を毎月のある程度の固定報酬で得ているので、生活も安心です。

前置きは長くなってしまいましたが、本題に入っていきたいと思います。今回は5章から始まっていますが、4章はPart2、3章以前はPart1で説明していますので、こちらも合わせて読んでみてください。

5. ストア運用時における重要ポイント

5-1. カスタマーサービス

ネットショップが開店してから、発生する業務としてカスタマー対応があります。カスタマーサポートは主に2つにわかれまして、①製品そのものに関するサポート(機能・技術・バージョン適合性等)です。購入前のプレサポートです。質問されそうなことはなるべく、サイト上に分かり易く表示して、質問を少なくする工夫が必要でしょう。それが顧客満足度の向上とショップ運営の負荷軽減になります。

もうひとつが、②購入後のサポートです。これは、決済されない、ダウンロードができない、ダウンロードメールが届かない、インストール・設定の仕方が分かりない、思っていた製品と違うので返品・返金してほしい、などのサポート要求が購入者からやってきます。

なるべくなら返品・返金対応は避けたいところですが、クーリングオフについても越境ECでは気をつけるポイントです。国によってクーリングオフ期間が違いますので、購入者の所在国に準拠することが求められます。例えば、EUは14日間、米国では3日間のクーリングオフ期間です。EUは特に消費者保護を強化した内容となっており、無条件で14日間、そして販売事業者側が返品の権利をサイトに明記していない場合は1年間返品を認めなければなりません。

カスタマサポートの対応手段ですが、基本メールでいいと思いますが、決済がされないとか製品が届かないなどの類いは購入者にとっては急を要する内容なので、「購入後のサポート」においては、電話窓口はあったほうが、私の経験上良いです。せっかく買ったのに使えない状況が続くと購入者のフラストレーションは急激に高まります。電話が難しい場合には、リアルタイムでやりとりできるチャットやLINEみたいな手もあろうかと思います。

カスタマサービスのリソース充当については、自社で従業員やアルバイトを雇うか、アウトソースするの2択になります。最近は日本に居住している外国人も増えているので、在宅勤務でパートタイムで雇用したり、あるいは世界中にフリーランスに委託できるようなマッチングサイト等、コストを抑える方法もあるのでチェックしてみてください。

5-3. 不正取引対策&チャージバック

不正取引対策とチャージバック対策については前回投稿の4章で説明したので、詳細は割愛させていただきますが、運用に入ってからが本番となる業務です。日本国内のEコマース詐欺レートは世界で最も低い数値(1%以下)となっていますが、海外では10%を超える国も結構もありますので、重ねて強調しますが、要注意です。デジタルコンテンツ自体に不正コピー対策やリバースエンジニアリング対策等のセキュリティを必ず実装することをお勧めします。

Eコマースの不正取引検知については専用のツールやサービスがあります。購入者の振る舞い、過去のブラックリスト、クレジットカー金融機関等の連携による情報などをスコアリング化して、購入を許可していいか瞬時に判定するシステムがあります。例えば、米国のIPアドレスから購入した人が10分後に中国のIPアドレスから購入しようとしていたら、明らかにおかしいですよね? どこでもドアがない限り、そんな瞬間移動はできませんので。こういう変な行動をシステムが見つけ、購入させないようにブロックします。

日本国内では「かっこ」さんに代表されるような素晴らしいソリューションがありますが、世界規模でカバーする不正検知ツールは数が限定され、非常に高価です。事実上、大手企業で大規模でグローバルにEコマースを行う場合のみ費用が捻出できるかと思います。クレジットカード決済の場合、3Dセキュアに対応しているとある程度安全性が担保されますが、中小規模のネットショップの場合、それにプラスして、不正検知ソリューションがすでに搭載しているデジタルコンテンツ用のSaaS型越境ECプラットフォームサービスを利用されるといいでしょう。

5-2. デジタルマーケティング

バックエンド系の業務を準備が整いましたら、売上げを伸ばす最も大切なこと、マーケティングに取り組みましょう。予算があることに越したことはないですが、デジタルコンテンツの世界ではリーズナブルに海外から集客できる方法がいくつかあります。

まずはFacebook等のSNSを最大限に活用することです。英語でバスれば一気に世界中に認知度が上がる可能性があります。日本語の比ではありません。日本から海外向けにソフトウェアを販売している、ある日本企業はFacebookで世界中にその製品のファンを作り、その製品の使い方などの情報を共有できるコミュサイトが形成されています。企業が何もしなくても、情報が拡散していきます。

次にアフィリエイトです。デジタルコンテンツに特化していて、世界をカバーするアフィエイトネットワークがいくつか存在します。世界100か国以上に十数万人のアフィリエイターなどを有していて、アフィリエイターが自国で紹介したい製品を自分のレビューサイトで紹介して販売すれば20-30%のコミッションを払います。アフィリエイトネットワークの登録に掛かる費用は20-30万円程度で、あとは売れたら支払いが発生するスキームですので、資金繰りの心配もありません。

グーグルのPPC広告ももちろん検討すべきでしょう。ターゲットの国ではグーグル以外の検索エンジンがメジャーであるケースがありますので、チェックが必要です。ロシアではあればYandex、中国では百度、といった具合です。ただ気をつけていただきたいのが、外国語が生半可知っている日本人がキャンペーンを作るのではなく、現地の習慣を分かっているネイティブスピーカーに運用を任せるほうが効果が全然高いので、考慮してみてください。自然検索によるSEOも大切ですが、米国ではSEOよりPPC広告の方が効果が高いというデータもあります。

無料版をダウンロードしてもらって利用してもらうのも良い手でしょう。フルファンクションを一定期間無料で使ってもらったり、機能を制限する無料バージョンを使ってもらって、ある機能が欲しくなった時に料金を払ってもらうなどのフリーミアム戦略は認知度・信頼性がない製品ではすごく有効だと思います。デジタルコンテンツ製品であることからこそ、手無料サンプルを越境であっても手軽に試してもらえるという利点があります。物理的製品では簡単に無料サンプル品を国際配送することができません。無料版を大量にダウンロードさせて、その時得られるメールアドレスを使って、情報発信したり、違う製品を売り込むときのメールマーケティングに活用することもできます。

長くなりましたが、ここまでとします。計3回にわたり、デジタルコンテンツの越境ECについて語ってみました。まとめますと、以下になります。

  • デジタルコンテンツは越境ECに最適な商材
  • 日本のコンテンツパワーは世界市場で強い
  • 年率10%以上で今後伸びる分野であり、利益率も高く美味しい市場
  • 少人数、小企業も世界相手に戦える
  • デジタルコンテンツの越境EC時のVAT課税に対する注意が必要
  • 不正コピー対策に留意する
  • 不正Eコマース取引に留意する
  • デジタルコンテンツにあったEコマースプラットフォームを選択する
  • デジタルマーケティングは工夫次第で低価格で情報を拡散できる

いずれチャンスがあれば私も、ソフトウェアを作ってくれる個人エンジニアの方と組んで、このビジネスをスモールビジネスとしてやってみたいと思うほど、低リスクでチャンスがある分野です。終わり。

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