21 Sep 2015

こんにちは。シルバーウィークはいかがお過ごしでしょうか?暑さも落ち着き、日に日に夕方に吹く風も涼しく心地よくなる季節ですね。暑いのが特に苦手な私にとっては、ようやく仕事に打ち込める環境になってきました。投稿に時間が空いたのも暑さにやられていたのが理由です(笑)
越境EC案件はやはり増えてきているのですが、最近、デジタルコンテンツを日本から海外向けてネット販売したいというケースがぼつぼつと出ています。ソフトウェア系、オンラインゲーム系、電子書籍等が該当します。物理的な国際配送の必要がなく、インターネット上で簡単に国境を超えるデリバリーを瞬時に行うことができます。国際物流は越境ECにおける最も面倒かつ複雑なポイントでありますが、デジタルコンテンツにはそれを考える必要がないので、正直、運用が楽ですし、越境ECに最も向いている商材であることは確かです。
筆者は欧米外資系企業の日本向けソフトウェアダウンロードストアの設計・運営・デジタルマーケティングを手掛けたことがありますが、反対方向、つまり日本から海外へ向けてのデジタルコンテンツEコマースの経験値が実案件を通し蓄積がされてきたので、ここで3回の連続投稿(Part1~3)で整理したいと思います。デジタルコンテンツ商材の越境EC、美味しい市場だと個人的に思っています。
1. デジタルコンテンツの種類について
デジタルコンテンツ製品の定義は、「インターネット上ですべてのデリバリーが完結する製品・サービス」となります。具体的には、電子書籍・ソフトウェア・オンラインゲーム・アプリ・デジタルキャラクター・動画配信・音楽配信・クラウドサービス等が挙げられます。PCやモバイルデバイスにダウンロードして使うタイプのデジタルコンテツ(ソフトウェア・電子書籍等)と、ダウンロードせずに、すべてネットワーク上でサービスが展開されるケース(動画・音楽ストリーミング配信、オンラインゲーム、クラウドサービス等)に大別されます。B2C向けがほとんどですが、セキュリティソフトウェアソフトウェアやビジネスアプリケーションのSaaSソリューションでは(セールスフォース等)においては、B2B向けEコマースも急増しています。
2. デジタルコンテンツ市場について
2014年の国内デジタルコンテンツ産業の市場規模は、一般財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)が発表したデータによると、約7.9兆円です。ジャンルごとに増減率はかなりバラツキがあり、電子雑誌は前年比88.3%増、電子書籍は49.8%増、インターネット上の音楽・音声配信が33.7%増、オンラインゲームが25.3%増です。特にオンラインゲームは元々市場規模が大きい上にこの成長率ですので、金額ベースでの伸びも著しい(1717億円増)結果となっています。反対にPC・ガラケー向けのゲーム・電子書籍が落ちています。モバイルファーストのトレンドが直撃しています。
世界全体では、2019年までに年率10-13%成長で60兆円程度の市場規模に達するだろうと予想されています。日本の市場規模はざっくり世界の15%前後占めると推測されます。この数字はグローバルEC全体における日本の市場シェア(約3-5%)を鑑みても、なかなか大きな数字だと思います。日本のデジタルコンテンツ市場・テクノロジーが世界より一歩進んでいる証左です。海外に向けて本ビジネスは十分期待ができると思います。特に日本のアニメとゲームは海外において絶大な人気があるのは周知の事実です。経済産業省がCool Japan政策として本腰を入れて支援しているのも追い風です。
3. デジタルコンテンツ製品の越境ECモデル
3-1. 基本ビジネスモデル
以前の投稿で物理的製品の越境ECモデルはご紹介しましたが、デジタルダウンロード製品での越境ECモデル(Cross Border)もおおよそこれと似ています。異なる部分もあります。下記の図をご覧ください。
海外向けのデジタルコンテンツダウンロード用のネットショップから、海外の消費者が購入し決済が完了すると、購入者のもとへコンテンツダウンロード用のURLとライセンスキーがメールで届きます。それをもとにダウンロードすればトランザクションは完了です。ショップ側は決済時に製品価格のみを徴収するケースと購入者の所在国によってはVAT(日本の消費税に該当)も一緒に徴収する必要があります。徴収した税金は購入者が所在する国の税務当局へネットショップ側が申告・納付します。詳しくは別投稿のPart2で説明します。
3-2. お店の出し方 – 直営ストア
ネットショップを出店する方法として、「自前の店を持つ」ということがまず考えられます。自社単独ブランドとしてネットショップを構築・運営していきます。よって自前で、越境・海外向けECシステム、決済システム、物流、カスタマサービス、デジタルマーケティング等、必要となる機能を揃えていきます。年商数百万~数千万円程度の中小規模のストアであれば、越境ECに対応したリーズナブルなSaaSタイプのショッピングカートサービスとそのサービスに付随する決済代行サービスを利用することでショップ構築時の初期コストは最小限に抑えることができます。通常のECプラットフォームではなく、デジタルコンテンツやソフトウェアダウンロードに特化したラットフォームを利用するといいでしょう。通常のショッピンカートシステムではデジタルダウンロード販売に必要なライセンス管理、デジタルコンテンツの配信機能、ライセンスキー等の自動生成・配布機能がありません。またデジタルダウンロード販売においては、アプリケーションを高速に配信するためのネットワーク・サーバーインフラ基盤が強力なものであることが求められます。マーケティング面では、製品に知名度がない場合は最初からマーケティングに予算をかけないと一向に海外市場から認知されないので、それなりと投資をしていくことが求められます。短期的には利益の出しづらいモデルですが、中長期的には消費者と直接接点を持つことでブランドロイヤルティが獲得でき、高い利益率を得やすいモデルとなります。
3-3. お店の出し方 – ショッピングモールへの出店
もうひとつの選択肢が、Amazonや楽天等のショッピングモールに出店するという方法です。最も手軽かつ簡単で初期コストもかからない方法です。両者ともに越境EC支援に力を入れておりますし、決済やデリバリーについてもお任せできますので、運用負荷は軽いです。運用コストはモール出展料+販売手数料(デジタルダウンロード製品の場合、約15%~20%程度)です。集客力がもともとあるので、マーケティング予算にあまり余力がない場合、スモールスタートでやりたい場合には最適です。ただ、モールの特性ゆえ、自社出店製品はモール内にある無数にある商材のなかで徐々に埋没していく危険性があります。自社ブランドを構築するにはあまり向いていません。いづれ、ブランドストア(直営ストア)とショッピングモールの比較、出店政策、国ごとに事情について考察したいと思います。
Part 1はここまでとします。デジタルコンテンツにおける日本のソフトパワーは世界市場でも極めて強いものを持っています。日本のアニメ・音楽・ソフト・ゲーム・アプリを通して日本の文化を知りたいと思う外国人は増え続けています。市場も急速に伸びていきます。原価が高い物理的製品に比較して、デジタルコンテンツは比較的に高い利益率を確保できますし、面倒な物流も必要がありません。
私が知っている従業員5名ほど中国の小さなソフトハウスは中国語でのソフトウェアを作らず、最初からグローバル市場を見越し英語バージョンだけを作って、越境EC用の低価格プラットフォームを活用し、自社ストアを建て、自社ソフトを売りまくっています。1つのソフトだけで年間3億円程度売れています。ソフトウェアの原価はSEの人件費だけですので、利益がでまくっています! こんなおいしいビジネスがデジタルコンテンツの越境ECでは現実としてあります。次回の投稿はこの続きをやります。デジタルコンテンツの越境EC Part2 – ショップ構築時の重要ポイントです。