3 May 2015

こんにちは。今日は世界のEコマース市場規模がどのくらいになっているのか、見てみたいと思います。越境EC/海外ECの戦略を立案する際にはぜひ抑えておきたい基礎データになります。具体的な戦略立案方法については後々ご紹介したいと思いますが、「ターゲット国の選定」は極めて重要なポイントとなります。ご相談をいただく案件の中で、初めて海外進出を検討するにあたり、よく東南アジアに進出したいというご要望をいただきます。なぜ東南アジアをまず最初のターゲットにご選択されるのでしょうか?という問いかけをクライアントにするのですが、返答として多いのは、「これから市場が拡大するから。地域的に近いし、なんとなく親近感があるから。競争が少なさそう。市場参入し易そう。」などです。この考え方は正しくもあり、誤りでもあります。順を追って考えてみましょう。
世界市場規模は日本の20倍
まず、左側のチャートをご覧ください。これはeMarketer社が2014年12月に発表したグローバルEC市場(B2C)の市場予測データです。(出所:eMarkter Retail Ecommerce Sales Worldwide,2013-2018) 黒の棒グラフが金額を、赤の折れ線が前年からの伸び率、青の折れ線がECと店舗販売を足した総流通額に占めるEC比率を表しています。旅行・イベントチケット市場は含まれていません。2015年現在の市場規模は約191兆円(USD1=JPY120換算)となっており、3年後の2018年には約298兆円に達する見込みです。年率16%の成長率です。日本のEC市場規模は2015年に9.5兆円、2018年に12.7兆円ですので、およそ20倍の市場規模が世界には存在します。あと注目するべき点は、EC比率の上昇です。これは物理的な店舗で購入するという購買活動からオンラインで購入する割合が増えてきているということを示唆しています。2015年では6.7%ですが、2018年には8.8%へと増加します。
アジアパシフィックが最大市場に
次に少しブレークダウンして、地域的に見てみましょう。こちらもeMarketer社が2014年1月に発表したデータです。(出所:eMarketer B2C Ecommerce Sales Worldwide,by Region 2012-2017) Worldwideの数字が上記とやや異なりますが、上記で含まれていなかった旅行関連等が含まれているようです。ここでは地域的な割合のざっくりとした傾向を把握したいので、対象市場の差異はあまり気にしないことにします。2015年を見ると、アジアパシフィック:38%、北米:30%、西ヨーロッパ:22%になっており、この3地域で世界の90%を占めます。今まで北米がシェアNo1だったのですが、アジアパシフィックが追い抜き、2017年には44%まで上昇する見込みです。ただ、この上記3地域が依然90%以上をカバーします。アジアパシフィックが急速に伸びている理由は何でしょうか?それは中国です。
爆速で拡大する中国EC市場
さらにブレークダウンして国ごとに見ていきましょう。同様にeMarketer社が2014年12月に発表したトップ10国のEC市場規模予測です。(出所:eMarketer Top10 Countries, Ranked by Ecommerce Sales Worldwide,2013-2018) 最初のチャートと同じ時期に発表されたデータです。%は前年比を示しています。旅行・イベントチケット市場は含まれていません。これを見ると1目瞭然ですが、中国がここ数年、年率20%~40%という爆速で伸びています。2015年現在ではグローバルEC市場の35%、2018年では40%を中国が占めると予測されています。そしてトップ10で約81%をカバーするという点も抑えておきます。
- 第1位:中国 2015年:35.3% 2018年:40.6%
- 第2位:米国 2015年:21.9% 2018年:19.8%
- 第3位:英国 2015年: 5.8% 2018年: 4.9%
- 第4位:日本 2015年: 4.9% 2018年: 4.2%
- 第5位:ドイツ 2015年: 4.5% 2018年: 3.9%
- 第6位:フランス 2015年: 2.6% 2018年: 2.1%
- 第7位:韓国 2015年: 2.2% 2018年: 1.8%
- 第8位:カナダ 2015年: 1.7% 2018年: 1.6%
- 第9位:ロシア 2015年: 1.2% 2018年: 1.2%
- 第10位:ブラジル 2015年: 1.2% 2018年: 1.0%
- トップ10合計 2015年: 81.3% 2018年: 81.1%
さて、今日のまとめに入りたいと思います。冒頭で「初めての海外進出において東南アジアをターゲットとするのは妥当かどうか?」という意味合いの問いかけをしましたが、上記データのみを分析する限り、「第1段階としては、東南アジアは主要ターゲットから外す」という選択肢もあろうかと思われます。当該地域の市場成長率は高いものの、市場規模自体の世界に占める割合はまだごくわずかであり、常識的に考えれば市場の大きい国から攻める方が効率的に売上を伸ばす確率が上がると思われます。とは言っても、データはデータでしかありません。製品特性、各国における競争優位性、市場参入の難易度によっても大きく変わりますので、結局は個別ケースで考えていくことになります。まずは森の視点で俯瞰してみました。どうぞ楽しいGWをお過ごしください。