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オンショアECモデル【入門編2】- 越境ECの進化系

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こんにちは。梅雨も本格的になってきました。蒸し暑さも増してきました。1年で最も苦手とする真夏よりはまだましですが、何とかなくだるさが続くこの頃です。テーマは前回に続き本格派ですが、今日は休日ですので、筆者はゆるい気持ちで書いております。

さて前回の投稿「オンショアECモデル【入門編1】ではオンショアの基本モデルとお客様側への対応に影響のあるフロント部分について、オフショアモデル(越境EC)との差異点を紹介してきました。オンショアはオフショアに比べて、決済面(決済手数料や決済方法の多様な選択肢)と配送面で断然、お客様側にメリットがあるというのが、ご理解いただけたかと思います。

今日はバックエンド側の差異をご説明したいと思います。再度、オンショアモデルの基本スキーム図を再掲します。

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1. バックエンドにおけるオフショアとオンショアの違い(物流面)

オフショアモデルの物流の流れは前回の投稿でご紹介しましたが、再度おさらいします。Eコマースストアで受注後、「日本の倉庫から直接、海外のお客様へ配送する」ということになります。よって、海外のお客様が輸入者となるため、関税・輸入消費税・通関手数料等をお客様が住んでいる国の税関通過時にお客様自身が払う必要があります。配送料等も加味すると、場合によっては製品価格と同じくらい費用がかかってしまうということも間々発生いたします。配送日数も1-2週間以上は掛かります。購入のハードルが高くなるので、海外の購入者の自国でも買えるようなコモディティ製品では通用せず、どうしても日本から買いたいと思える強い・特徴的な製品を用意することが不可欠です。

それでは、米国向け専用に作られたオンショア型Eコマースを例にとって、オンショア型の物流スキームについて説明したいと思います。上記の図にあるとおり、まずは貴社は日本本社から2か月に1回、ロット(例えば10,000個:3か月分の販売予定数量)で製品を貴社米国法人へ輸出します。米国の通関時に関税を支払い、貴社の米国倉庫もしくは貴社が契約している米国の倉庫会社に納入します。在庫を切らさず、倉庫代が高くつかないように、適正在庫を確保していくことになります。米国向けEコマースストアから受注後、その米国内にある倉庫からFedEX・USP等の宅配業者を利用して米国内のお客様へお届けします。

このスキームにより、米国のお客様にとってはオフショアECのように関税を支払う必要はなくなります。ただし、米国の52州毎で定められている売上税(日本の消費税に該当)は支払います。配送日数も1-2週間から数日へと大幅に短縮され、配送料もぐっと安価になります。また、返品率の高い米国では返品・交換処理のスピードも断然速くなり、いいことばかりです。ショップ側への満足度が上がることでしょう。一方、ネットショップ側にはコスト負担とオペレーション負担が増えます。輸出コスト・関税・米国倉庫/フルフィルメント代・ネットショップの米国向けオペレーション等の負担増が見込まれます。

2. バックエンドにおけるオフショアとオンショアの違い(税金処理面)

オンショアとオフショアで異なる非常に重要なポイントとして税金処理があります。オフショアの場合、海外のお客様が輸入消費税を直接、各国の税関へ支払うので、日本のネットショップ側は消費税を回収する必要もありませんし、各国の税務当局への支払義務はありません。もちろん法人税も同様です。しかし、オンショアモデルは貴社が対象国に法的に有効な現地法人を立てることが原則ですので、各国の税法に従う必要があります。税金も各国・製品によって、いろんな種類の税金があります。

米国の例ですと、まずは売上税の処理です。52各州毎に異なります。15%を超える州もあれば、無税の州もあります。ネットショップ側がショッピングカートにおいて購入者情報(住所等)に基づき、適切な税率を表示し、回収しなくてはなりません。回収した売上税を各州税務当局にショップ側が支払うことになります。次に法人税です。米国に現地法人がありますので、米国の法人税法にのっとり支払う必要があります。また、EU諸国では家電製品の販売時にはリサイクル税をショップ側が徴収し、当局に支払う必要があります。

日本での税オペレーションと同様のことが必要になるとお考えいただけば分かりやすいかと思います。国によって、同じ国でも地域によって、製品によって、掛かる税金の金額や種類が異なります。とても複雑な世界ですので、税金のハンドリングを行う経理担当者の従業員、契約税理士事務所等が現地に必ず必要になります。

3. オフショアとオンショアはトレードオフの関係

以上、バックエンド側におけるオンショアモデルの主要オペレーションをご紹介してきましたが、ちょっとハードルが高い、と思われた方も多いかと思います。オフショアと比べて負担が大きくなるかわりに、現地にアジャストして運営を行いますので、リターンも大きくなります。また、貴社が対象国に現地法人を立てることなく、オンショアECが構築できるビジネススキームや支援するEコマースサービスプロバイダーも現れています。これらを活用すればローコストで少ない人数で対象国に最適化されたショップ運営が可能になります。いづれ、具体的なベンダー情報やサービス情報をご提供したいと思っています。次回はオンショアモデル入門編3として、売上を増やすためのマーケティングについて概要を触れたいと思います。

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