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越境ECの市場規模予測 – 中国・米国向けが5年後に2倍に

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おはようございます。今日は越境ECの市場規模がどう伸びていくのかについて、考察してみたいと思います。

経済産業省は今年5月に「平成26年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」をリリースしました。これは、毎年発表しているデータで日本のEコマースの現状を知るために、包括的かつ詳細に分析されているクオリティの高い市場調査資料です。

この資料の中に越境ECに関する市場規模予測データが記載されています。対象国は中国向けと米国向けに限定しています。ここでいう、越境ECの定義は本ブログで紹介している「クロスボーダー/オフショアEコマースモデル」とほぼ同様です。日本国内にある海外対応のネットショップから海外の消費者が個人輸入の形態にて購入するスキームです。ポイントを整理します。

1. 2014年から2018年にかけて市場規模は約2倍に増加

米国の消費者が日本の越境ECサイトから購入する額(推計)

  • 2014年:4,868億円
  • 2015年:5,534億円
  • 2016年:6,250億円
  • 2017年:7,006億円
  • 2018年:7,803億円

中国の消費者が日本の越境ECサイトから購入する額(推計)

  • 2014年:  6,064億円
  • 2015年:  8,006億円
  • 2016年:  9,994億円
  • 2017年:12,047億円
  • 2018年:13,943億円
  • 出所:経済産業省 平成26年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)

米国と中国はGDPと同様、Eコマースの世界でもダントツで1・2位の市場規模を競っているので、越境ECにおいても、まずこの2国だけ抑えていれば、大まかなグローバルな傾向が掴めると思います。最近の中国人観光客の”爆買い”でも象徴されていますが、2015年現在すでに日本のネットショップにとっては中国が最も大切なお客様だと言えるようです。

2. 訪日外国人の急増

訪日外国人旅行者数(推計)

  • 2014年:1,340万人
  • 2015年:1,432万人
  • 2016年:1,531万人
  • 2017年:1,637万人
  • 2018年:1,750万人
  • 2019年:1,871万人
  • 2020年:2,020万人 → 東京オリンピック!
  • 出所:JTB

訪日外国人が増えていて、その影響によって越境ECの販売額も伸びてきているトレンドも見逃せません。特に中国人観光客の購買活動において、この傾向が顕著に現れはじめています。日本で爆買いし、帰国後、中国向け越境ECサイトから購入を続けるというパターンです。

2020年の東京オリンピックに向けて、日本製品の良さを分かってもらうことができる大きなチャンスです!

素晴らしい成功事例として、下記をご紹介したいと思います。

年間43万人の外国人旅行者が殺到!「チラシ」でリピートを促進する多慶屋×tensoの越境EC施策(出所:ECzine)

3. 米国・中国ともに越境ECでの人気商品はアパレル

上記の経済産業省の市場調査結果によりますと、米国・中国における越境ECでの購入人気商品は、以下の割合になっています。

【米国】

  1. 「衣類・靴・アクセサリー」:33%
  2. 「娯楽商品(デジタル除く)」:24%
  3. 「旅行関係」:17%
  4. 「玩具・ホビー商品」:17%
  5. 「電子機器」:16%

【中国】

  1. 「衣類・靴・アクセサリー」:16%
  2. 「化粧品・スキンケア」:12.9%
  3. 「ベビー・マタニティ用品」:12.6%
  4. 「IT関連商品」:9.4%
  5. 「デジタル製品」:7.7%
  6. 「食品・健康食品」:7.1%

両国を比較すると興味深い差異があります。「衣類・靴・アクセサリー」は両国ともに1位ですが、他は各国のマーケットや嗜好が反映されているようです。米国の日用品のクオリティはそこそこ高水準ですので、越境ECにてわざわ買う必要はないわけです。米国内ではあまり入手できない趣味で欲しいと思う嗜好品が海外から購入されていると読み取れます。一方、中国は「化粧品・スキンケア」、「ベビー・マタニティ用品」、「食品・健康食品」等の日用品の割合が高いです。この分野の品質は、中国メーカーよりも日本をはじめとする海外メーカーのほうが高いという認識が中国国内で浸透しているようです。直に体に触れるもの、口にいれるものについての安全性への意識が高まっていることも、このデータを反映しているのだと思います。私のもとにも、複数の日本のサプリメントメーカーさんが中国に進出したいという案件が舞い込んできています。

4. 中国の越境ECユーザは20-30歳台・高学歴・高収入・1級都市!

こちらも上記の経済産業省の市場調査結果からですが、中国の主な越境ECユーザは以下の属性を持つようです。

  • 25歳~35歳で74.9%を占める。
  • 大学卒・大学院卒で75.5%を占める。
  • 月収5,001人民元の割合が58.5&%を占める。
  • 居住地が北京、上海、広州で39.5%を占める。

また、中国越境ECユーザがどの国のサイトを利用しているかというと、下記のようになっています。

  • 米国:約64%
  • 日本:約31%
  • 韓国:約25%
  • 英国:約22%
  • シンガポール:約18%

中国のTier-1層(エリート層)は冷静に自国と海外の製品レベルの差異を見ており、高い関税や送料を払ったとしても、より安全のもの、よりクオリティが高いものを求めていると思われます。

5. 中国における通関・関税の改善が進んでいる

中国に向けての越境ECにおいて大きなハードルである複雑な通関手続き。通常の方法だと日本のネットショップ事業者から製品を中国へ発送し、中国での通関手続きに数週間かかるので結局、購入者に届くのは受注後1か月ということは間々あります。日本では考えられないスピード感です。。しかしようやく光明が出てきています。2013年から始まった「保税区モデル」です。上海等の一部の都市でEコマース用に実験的に行われている制度です。日本から、まず保税区にある倉庫に送って商品を保管します。このときは通関手続きなしでOKです。中国国内の消費者から受注したあと、その倉庫から国内配送(2~3日)しますので、時間とコストが大幅に削減できます。通関手続きは倉庫から出荷する時点で行います。

また保税区モデルと使うと、通常の正規個人輸入よりも関税率の簡素化と低い税率が適用されるという大きなメリットが享受できます。50元以下は免税となり、日用品等は10%が適用されます。(関税+消費税を一緒に徴収)

本日は、ここまでとします。日本の越境ECサイトから購入する海外の消費者が急増しています。また、越境EC事業者および海外の消費者にもメリットがある制度・インフラが各国で改善されてきています。今、多国間で交渉が進んでいるTPPも強い追い風になるでしょう。ぜひ、チャレンジを!

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