21 Jun 2015

こんにちは。だいぶご無沙汰してしまいました。前回の投稿がGW明けの初日でしたので、約1.5か月ほど空きました。4月1日から新しい期が始まっている日本企業がGW明けから、一斉に本格的に動きはじめた余波を受け、私の元にも新しい海外EC案件が舞い込んできております。それもあり、ブログの更新になかなか時間がとれなかったのも、そのせいであります。体力がないもので。。ただ、この1か月は複数の大型EC案件のコンサルティングや提案にかなり時間と労力を取られていたのは事実です。
例えば、全世界に向けてデジタルダウンロード製品を自社のブランドEコマースサイト(直営サイト)で販売していくというプロジェクト、もうひとつはアパレル企業において北米・西ヨーロッパ・オーストラリア・ニュージーランド向けに、やはり自社ブランドEコマースを展開するというプロジェクトです。東南アジア諸国(シンガポール、台湾、インドネシア、香港・マレーシア)をターゲットに新ブランドを投入していくプロジェクトというのもありました。アパレルやアクセサリー案件が多くなっている気がします。知名度がなくても日本からグローバル市場へ積極果敢に挑戦しようとするお姿は、サポートする側の私も元気がでます。最後の案件は、「越境EC(クロスボーダー)」でのビジネスモデルあり、前者2つのプロジェクトは「オンショア(On-Shore)」という越境EC型とは異なる海外ECモデルの形態です。
EC系メディアはこぞって「2015年は日本の越境EC元年」と言い始めています。若干バズワード化してきた感があります。越境ECという用語はややイメージがつかみづらい用語だなと個人的に思っていますが、日本では標準的なEC業界用語になりつつあるので、本ブログタイトルにも利用させていただいております。前回、越境ECモデル入門編をご紹介しましたが(じつは様々な応用スキームがあります。それはまた追々紹介します)、グローバル規模でのEコマースが発達している欧米では、クロスボーダーEコマース(Cross Border E-Commerce)とかオフショアEコマース(Off-Shore E-Commerce)などと呼んでいます。Cross Borderとは文字通り「国境をまたがる」という意味ですし、Off-Shoreは「岸から離れる」という意味になります。Cross BorderはM&Aの世界でも最近よく見かけるようになっております。日本企業のソフトバンクが米国のモバイルキャリアのスプリント社を昨年買収しましたが、これはクロスボーダーM&Aとなります。Off-Shore(オフショア)は以前から日本のソフトウェア開発業界でもよく利用されている用語です。人件費の安いインドやベトナムにソフトウェア開発を日本から移転させるといったことがありましたし、今でも増加傾向にあります。Eコマースにこの考え方を当てはめると、「Eコマースストアから売れた製品が、日本の倉庫から国境をたまがって購入者に届けられ、クレジットカード等の支払決済も国をまたがる」ということになります。これを日本語的に訳されたのが越境ECというワードにつながってきたものと思われます。
対極にあるのがOn-Shore(オンショア)です。日本語の意味は「岸に上陸する」になります。Eコマースに当てはめると、「対象国向けに最適化されたEコマースストアによってオーダーを受けた製品が、対象国の国内倉庫から購入者へ配送され、支払い決済もその国内で完結する。」という意味合いになります。日本で騒ぎはじめている越境ECとはOff-Shore Modelを指しておりますが、グローバルにEコマースを本格展開していくにはOn-Shore Modelの観点もしっかり理解していくことが必要不可欠です。日本においては、越境EC市場自体がプロダクトライフサイクルにおいてEarly Stage(初期段階)ですので、体系的にまとまった情報もほとんどないですし、Off-ShoreとOn-Shoreの違いも十分に説明されておりません。ましてオンショアモデルになりますと非常に複雑な要素が絡み合ってきますので、さらに情報を見つけづらいという状況であろうかと思います。日本企業でオンショアモデルに以前より取り組んでいるのは、ごく限られた一部の超大手企業のみです。一方、欧米企業はオフショアモデルだけでなく、大手企業から中小企業までオンショアモデルを活用し、グローバル規模でEコマースを展開しています。日本と比較すると5年程度は進んでいるように思います。筆者はオフショア、オンショア共に実際の案件を手掛けているので、日本の皆さまに少しでも良質な情報を提供できればと思っています。多少複雑な世界なので、私自身の頭の整理も兼ねてですが、基本モデルを理解すればあとは国ごとに見ていけばいいので大丈夫です。さて、今日はオンショアモデルの基本構造について、抑えていきましょう。下記に順を追ってご説明していきます。
1. オンショア(On-Shore)ECビジネスモデルの標準スキーム
物理的な製品配送を伴う場合でもデジタルダウンロード製品においても共通の標準モデルになります。一言でいうと、「ターゲット国において、日本国内と同じビジネススキームとオペレーションでEコマースストアを運営する」ということです。ですので、ターゲット国に原則、法的に有効な現地法人が必要となります。米国であれば、貴社の米国法人を設立し、米国の52州に売上税(日本の消費税に該当)を支払うための税金支払者としての登録を行うことがスタート時点となります。まず、この点がオフショアモデルと決定的に異なる点になります。オフショアモデルにおいては海外現地法人は必要ありません。現地に法人を設立した以上は物理的な店舗をもたないEコマースストアとは言えども、原則、恒久的な現地オフィスが必要になり、ペーパーカンパニーでは要件を満たすことはできません。(国によって、厳しい緩いの差異は多少あります。)
2. フロントサイドにおけるオフショアとオンショアの違い(顧客への配送面)
お客側へ対するフロントサイドにおけるオフショアモデルとの決定的な違いは、「配送と決済」になります。オフショアの場合は「日本倉庫 → 米国の購入者へお届け」になりますが、オンショアの場合は「米国倉庫 → 米国の購入者へお届け」になります。配送日数が1-2週間から2-3日へと大きく短縮でき、また配送料金も下がるため、購入者の満足度が上がります。またオフショアの場合、米国の購入者が「輸入者(Importer of Record)」に原則なるため、米国への輸入時の関税・輸入売上税・通関手数料等を購入者自身が支払うことになり、配送費と合わせると製品価格と同じくらいの追加コストがかかったりしてしまうケースもよくあります。しかし、オンショアの場合はこの追加コストや関税手続き等が購入者側には不要になりますので、ここでも購入者の満足度が上がります。(*オフショアモデルにおいて、事業者側が関税・輸入売上税・通関手数料等を負担する特殊スキームは別途、紹介したいと思います。)
3. フロントサイドにおけるオフショアとオンショアの違い(顧客側の決済面)
続いて決済です。米国の場合、決済通貨はオフショアでもオンショアでも米国ドルです。決済方法の種類に違いがあります。オフショアの場合は、VISA, MASTER, American Express等の国際クレジットカード(PayPal含む)のみの選択肢しかありませんが、オフショアの場合は米国国内で使用できるローカル決済方法(例えば、Allied WalletのようなウォレットやBill me Laterのような後払い)などもEコマースサイトが用意することできます。購入者にとっては決済方法の選択肢が増えることにより、利便性が高まります。日本で例えるならば、日本でしか使えないコンビニ決済やキャリア決済などが可能といった感じです。クレジットカードも国際クレジットではなく、ローカルクレジットであれば決済手数料も安くなります。また購入者によっては、クレジットカードを持っていないでしょうし、セキュリティが心配な方はカード情報が必要でない他の決済方法を好むケースもあるでしょう。米国は世界的に見てもクレジットカード普及率が一番高い国なので、カード以外のローカル決済方法を用意できなくても致命的な影響はないかと思いますが、それでも、多様なローカル決済方法を持っていたほうがコンバージョンレートは確実に上がります。いづれ別の投稿で説明しますが、クレジットカードだけでは全く通用しない国は世界中結構あります。例えばドイツでのEコマース決済でのクレジットカード使用率は15%程度であり、ローカルデビットカード利用が大半なので、それに対応していないとコンバージョンレートに深刻な打撃を与えることになります。中国でアリペイやユニオンペイで70%以上を占めるので、これに対応していないとアウトです。
じつはオンショアとオフショア(越境EC)にはまだまだ差異があり、オンショアモデルの説明を完結させたかったのですが、久しぶりにブログを書いたので疲れてました。続きは次回に、今日はここまでとしたいと思います。明日からの業務に備えて、静かな日曜の夜を過ごしたいと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。