7 May 2015

こんばんは。GWが終わり、今日から仕事再開の方も多いかと思います。筆者もその一人ですが、1週間休むとだいぶ疲れが取れますが、復帰1日目は頭が回りませんでした。いつもそうです。さて、今まで4回にわたりグローバルのEコマーストレンドを俯瞰してきましたが、今回から少し実践的な内容に踏み込んでいきたいと思います。どうやってネットショップやオンラインビジネスを具体的に海外向けに構築して・運営していくのか?というテーマです。海外進出を命ぜられた企業におけるEコマースの担当者の皆さま、虎視眈々と海外の巨大市場のすき間を狙う中小企業の社長さま、資金はあまりないけど、このまま会社をいるのもストレスたまるので、個人でも事業運営できるネットショップを海外向けにやってみようかと思っているノマド候補者の皆さまに向けて、それぞれの属性に合致するであろうビジネスモデルを複数紹介していきたいと思います。比較的新しい分野であるため、あまりネットや本でも情報がありませんが、Eコマースの海外展開方法については、実はいくつかのオプションがあります。それぞれメリット・デメリットがありまして、オプションによって必要投下資金と投下した資金に対するリターンも変わってきます。まずは最近、言葉が先行しつつある「越境EC」について、できる限り分かり易く説明したいと思います。
1 越境EC(クロスボーダー)ビジネスモデルの標準スキーム
物理的な製品配送を伴うケースでの標準モデルになります。とてもシンプルです。海外の消費者に自社ネットショップで購入して、クレジットカードで決済していただき、あとはEMS等を使用して海外の購入者へ直接配送するだけです。ただし、相手国先の輸入時に購入者側が関税等を支払うことになりますので、サイトにその旨、必ず記述しておく必要があります。ソフトウェアダウンロード製品などデジタルコンテンツの場合は事業所側での税金処理が異なりますので、注意が必要です。デジタルダウンロード製品についての越境ECモデルは別途、整理したいと思います。
- 法人形態:日本法人(海外に法的な現地法人は立てる必要はありません)
- サイト言語:英語やターゲットとする国の言語
- 決済通貨:まずは世界基軸通貨である米国ドルが無難かと思います。
- 決済方法:国際クレジットカード(VISA,MASTER,JCB等)、PayPal
- 銀行口座:日本の銀行口座
- 税金処理:事業者側はない。海外の購入者がその国の税率に従って関税・輸入消費税・通関手数料等を支払う。製品価格・製品種類によって関税がかからないケースもある。国によって異なる。
- 輸入者:海外の購入者
- 物流:EMS等を活用し、日本の倉庫から海外の購入者へ直送。(途中、税関審査を受ける)
- コンプライアンス/規制準拠:製品によっては、その国の輸入規制や現地法に引っかかるケースもある。
2 越境EC(クロスボーダー)モデルのメリット
【事業者のメリット】
- オンショアモデルに比べて、比較的安価にネットショップを構築することができる。
- オンショアモデルに比べて、比較的に早くネットショップが開店できる。
- オンショアモデルに比べて、開店後の運営コストは比較的安価。
- 海外現地法人を設立する必要がない。
- 海外で現地銀行口座を開く必要がない。
- 海外の現地国内販売においては準拠が必要な規制が、越境の場合、免除されることもある。
- 関税や輸入消費税等は海外の消費者が払うので、事業者側はケアする必要がない。
- 日本の消費税を海外購入者から回収する必要がない。
- 現地の国内販売に必要なライセンスを取得する必要がない。
- 日本の倉庫を活用できるので、幅広い製品を海外に販売できる。(現地に倉庫を持つ必要がない。)
- 日本の倉庫を活用できるので、在庫管理も既存日本向けショップとも一元管理しやすい。
- オンショアモデルについては後日、別投稿でご紹介します。
【消費者のメリット】
- 豊富な品揃えから日本製品を購入できる。(日本の倉庫を活用するので)
3 越境EC(クロスボーダー)モデルのデメリット
【事業者のデメリット】
- 製品価格以外に関税や輸入消費税等を別途、消費者自らに税関へ支払ってもらう必要があるので、消費者にとっ ては面倒。最後の最後で受取拒否につながるケースも。購入に躊躇するケースも多々あるので、コンバージョン レートの低下につながりやすい。
- 決済方法が通常、国際クレジットカード(VISA, MASTER, JCB等)・PayPalしか選択肢がなく、消費者が好むロ ーカル決済方法を用意できないので、コンバージョンレートが低くなりやすい。
- 消費者への配送リードタイムに時間がかかるので、顧客満足度が低くなりやすい。
- 返品/返金処理に時間がかかるので、顧客満足度が低下しやすい。
- カスタマーサービスが消費者の国になく、言語上の壁や時差の問題から、日本でオペレーションしているネット ショップ側とコミュニケーションが取るのが難しい。結果、顧客満足度が下がり、たとえ購入に至っても、その 後のリテンション(将来、アップセル・クロスセルにつながる顧客との継続的な関係維持)するのが困難。将来 の販売機会を失いやすい。
【消費者のデメリット】
- 製品価格以外に関税や輸入消費税等を別途、自分自ら税関に支払う必要がある。
- 決済方法が通常、国際クレジットカード(VISA, MASTER, JCB等)・PayPalしか選択肢がなく、自分の国でメジャーなローカル決済方法で支払ができない。(デビットカード、WebMoney、Alipay、代引き等)
- 国際クレジットカードやPaypalの手数料が国内決済手数料よりも高い。(クロスボーダー決済になるため)
- 国によっては、国際クレジットカード決済の拒否率が非常に高く、決済ができない。
- 購入後の製品が届くまで時間がかかる。(日本の倉庫からEMS等で送るので)
- 不良品等の返品/返金処理に時間がかかる。
- カスタマーサービスが自分の国になく、言語上の壁や時差の問題から、日本でオペレーションしているネットショップ側とコミュニケーションが取るのが難しい。
今日はここまでとしたいと思います。ポイントは越境EC(クロスボーダー)ビジネスモデルはネットショップ海外展開における1つのオプションです。コストも手間も比較的にさほどかからないのでスタートできるので、まずは手軽に試験的に開業したい場合にお奨めのモデルです。ただ、消費者側にとってはデメリットが多いので、ここは割り切るほかないかと思っています。このモデルで成功するには、購入時に消費者にとってはデメリットが多いので、それを乗り越えてでも絶対に買いたいと思える製品、つまりコモディティ化されている製品ではなく、強い製品、特長的な製品、競争力のある製品であることが必要です。そしてその製品がどこが優れているのか、なぜ優れているのかをネットショップ上やオンライン上で海外の潜在顧客に対して、理解していただくということも欠かせません。いくら良い製品であっても、その存在を知っていただかなくては購入プロセスのテーブルに乗ることができません。いづれ海外にマッチしたデジタルマーケティング戦略・手法について整理したいと思っています。終わり。